「マルクスの『資本論』」を読みながら(5)
粗くはあるけれど、ひととおり読み終わったところで、この本を読んで良かったと思うことをいくつか書いてみようと思う。「いくつか」としたのは、実は良かったと思うところがたくさんあり過ぎて、書こうとするときりがなくなるからだ。一部を並べてみたい。
一番良かったことはもちろん、「資本論」という、普通の学生にはまったく手の届かないような場所にしまわれてあった書物が、私のような平凡な学生にも触れることができる程度にまで高度を下げ、やさしい言葉で読めるようにしてあったということだ。今までは高い場所を見上げるようにして、ため息をついていた書物だったのに、その書物の世界がまさに自分の目線に等しくなり、自分の言葉で読むことができて楽しめる感覚は最高だった。
もちろんフランシス・ウィーンの「マルクスの『資本論』」は、決して本当の「資本論」そのものではないし、この本を読めたからと言って「資本論」を理解できたというわけではないということもわかっている。それでも、その世界に触れるという、心が沸き立つような感覚だけでも、十分なほど楽しかった。
もう一つ良かったことは「芸術としての資本論」という視点だ。強烈な絵画や、壮大だけど、何か不調和な感情をかきたてられるような音楽の感覚など。マルクスが使用した、わざと調和を壊した表現を知ることで、「資本論」の内容は理解できなくても、その表現しようとしていた不気味な世界の方は十分に、感覚に訴えるものとして味わえる。
そのほかにも「資本論」が難しいと言われている理由を少しでも知ったり、この書物とマルクスの関係、またこの書物と世界との関係という視点で読むなど、とにかく読みやすいのに視点は多く、いろいろな感覚で楽しめる。マルクスの「資本論」ではなくても、フランシス・ウィーンの「マルクスの『資本論』」という立体的な世界も、とてもおもしろい。
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