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株式会社は2つの顔を持っています。

 もう20年以上前、私がはじめて就職して1年目ぐらいの時のことです。生まれつきの世間知らずな性格である私は、上司に質問をしたことがありました。

 「会社って、どうして大きくならなくちゃいけないんですか?」。

 私はこの時すでに、中小企業ながらも会社の中にどっぷりと漂っている「お金、お金、お金!」と叫び続けるかのような、株式会社が持っているお金に対する貪欲さにうんざりしていたのです。

 上司の答えはこういうものでした。

 「会社が大きくなれば、大きな仕事ができるでしょう? たとえば大きな製品を作ったりできるじゃない。飛行機とかそういうものは、小さい会社には作れないでしょう?」。

 その時は「ふーん、そういうものか」と思いました。

でもあとで考えてみて、「世の中には大きな製品だけではなくて、小さな製品とか、世の中に必要とする人が少ないけれど、望まれている製品というのもあるのではないか?」と思いました。

 たとえば大量生産される工場のパンよりも、小さなパン屋さんで焼かれるおいしいパンとか、それからケーキやプリン。女性の洋服なども、制服でもあるまいし、大量生産の似たようなデザインの服よりも、小さなお店で少しだけ作ってくれる洋服やアクセサリーの方が楽しいはずだと思ったのです。

 そう気がついた時には、上司はもう仕事に熱中していて、聞ける雰囲気ではなかったのですが…。

 良い子たちはおそらく学校で、こういう風に習うのではないかと思います。

 「会社というのは、みんなで力を合わせて仕事をして、社会に役立つものを作るところです。そうして儲けたお金で、みなさんも生きていけるのですよ」と、そういう感じです。

 もちろん私も、「そうなんだろうな」と思っていました。それで実際に就職して働き始めると、あまりに会社が従業員にケチん坊で、お給料が少ないように思うのですが、その理由も知らずに「世の中って、そういうものなのだろうな」と思いました。

 「株主」とか「配当」という言葉を耳にしたことがある労働者は多くても、その株主と、株式会社の中で働いている自分たちが、どういう関係にあるかを知っている人は本当に少ないのです。簿記の仕組みを知っていても、株式会社における株主の取り分と、労働者の取り分の関係に気がついている人は、ほとんどいません。

 経営者や財務部の部長は知っていても、株式会社の中で働いている人は、おもしろいほどそのことを知りません。もちろん以前の私も、株式会社が稼いだお金は全部、経営者と労働者の取り分になるのだと思っていました。

だから会社というのはたくさんお金を儲けなくてはいけないのだろうと思っていました。たくさん儲ければ、経営者と労働者の取り分が全体として大きくなるはずだと思っていたのです。

 世の中で働く労働者のほとんどは、一生をとおして「お金が家に余る」ということが、あまりありません。というのは収入となるお給料は低いので、稼いだお金のすべてを必要なものを買って、使ってしまうからです。一生をつうじてお金が余るということがないので、私の実家のように、「株を買ったことがない」という家庭も多いでしょう。

 株主という立場を体験し、株価の変動による差額や、年に2回もらえる配当金と、株式会社における儲けの関係に気がつくと、天地がひっくり変えるほど驚きます。

今までは社会のために働いているのだと思っていた会社というものが、一転して、株主のお金を増やしてあげるために働いていた会社であったことに気がつくからです。

 つまりもともとお金をたくさん持っている人たちのお金を、さらに増やしてあげるために、自分たちが働いていたという面が見えるのです。

 株式会社による生産が、社会に役立つことは事実です。
 でも株式会社の目的が、株主の財産であるお金を増やしてあげることにあるというのも、事実です。

 だから株式会社は善良ですが、でもやっぱりお金には貪欲なものなのです。

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