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経済の輝き

 心の調子が良くなかった頃、私には経済というものの、暴力的な面ばかりが意識される傾向がありました。

 

 心の回復に伴いだんだんと、経済の健康的な面にも意識が向くようになりました。shine

 

 ある日のことでした。

 

その日も事務所の中は、あちこちで男性たちの声が飛び交っていました。

 

私は朝から何度も電話を取り次ぎ、来客があればお茶を出し、合間に仕訳伝票を作っていました。

 

大きな事業のスタートが間近に迫る、とても慌ただしい時期でした。

 

 朝から電話、電話、来客、電話、調べものをしていても、また電話と…。

 

 時間がどんどん過ぎています。

 

 電話による中断が重なり、私の伝票はなかなか進みません。

 

 それでも私は、その慌ただしさもまた、好きでした。

 

 電話が途切れた合間に冷たい水を飲み、あちこちで電話に出ている男性たちの声の中、ふと緊張が解けたのか、私は不思議なことを思いました。

 

 「私は今、経済の一部になっている…」と。shine

 

 自分の身体の在り所が変わったように、その時の私は不思議なことを感じていました。

 

 経済の本質は「モノ作り」です。

 

 もう少し正確に言うと、財やサービスの生産です。

 

 財やサービスの生産がまず在り、それから交換、その後の消費があって、その結果、人間の生存が維持される。

 

 それこそが経済の本質です。

 

 経済の本質は、お金でも経済指標でも、株でもありません。

 

 経済指標がどのような数値を示そうが、経済の本質は人間による財やサービスの生産と、交換と、消費と、生存で、すべてです。

 

 情報に過ぎないお金や数字が何を示そうが、財やサービスの生産があっての経済活動です。

 

 経済の本質はモノ作り。shine

 

 そのことは私の中で、はっきりとした理解になってはいましたが、その時の私は頭の中の理解でなく、突然、身体の感覚で「経済」という人間の活動を感じていました。

 

 私が取り次ぐ、一本一本の電話のメッセージが。

 

 私が用意する、来客時のお茶の一杯一杯が。

 

 私が作っている振替伝票の1件1件が。

 

 それらがすべて、経済の一部であると気がついたのです。

 

 男性たちは電話の応対に忙しく、取り次ぐ電話は何度も行き違い…。

 

 会議は何かが決まっても、状況が変わっては再び召集され。

 

 何かが決まって動きが起こり、何かが進んで、その先でまた何かが見つかっては、またその対応に手をかけながら、ものごとは進んでいく。

 

 そうしたプロセスが繰り返され。

 

 そうやって「モノ作りを推し進める力」は何度も行方を見出し、たくさんの手間がかかった最後に大きな生産物が完成し、世の中のどこかに、はっきりとした姿を現します。shine

 

 数字は経済をまことしやかに語りますが、たとえ情報に過ぎない数値が何を示そうと、「モノ作り」という経済の本質は、人間が生産を続ける限り、止まるということはないのです。

 

 人間が財やサービスの生産と交換を始めた時から、経済という活動はすべての時代を貫いて、まったく止まることなく続いてきました。shine

 そうして私が圧倒されるような驚きとともに、経済を身体で感じている時も、世界では一瞬の休みなくどこかで何かが生産され、交換と消費によって、人間の生存が維持されます。

 

 その様子は、まるで休みなく回り続ける、見えない大きな車輪のよう。

 時代を超えて回り続けている実体経済の循環は、まるで大きすぎる光によって作られている、大きな光の流れの輪のようでした。shine

 その中のほんのひとかけら…。

 

粒にもならないような小さな、小さな一部として、私もまたひとりの事務員として、経済の一部となっています。shine

 そうやって世の中は休みなく、未来に向かって動いている。shine

 

 自分が感じたあまりにも壮大な「経済」の実感に、思わず圧倒的な感動を覚えて息をついていた、その瞬間。

 

またしても着信を知らせる電話のランプが光り始め、私は条件反射のように受話器を手に取ります。

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